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ディスクロージャー制度の現状と展望

金融商品取引法の成立

  • 2006年6月、金融商品取引法が国会で成立。
  • 証券取引法を全面改正し、従来の有価証券概念にとどまらない幅広い投資商品に対して利用者保護を適用。
    • 集団投資スキーム概念の導入などで「投資サービス法」を確立。
  • 罰則の強化に関する規定は既に7 月から施行されている。投資サービス法など主要規定は、2007 年7 月施行の見通し。
  • リスクを伴う投資商品が法の適用対象とされているが、将来は預金や保険などもカバーする「金融サービス法」への発展が期待されている。
    • 法の附則でも5 年後の見直しが定められ、参議院の附帯決議では見直しの前倒しの検討も求められた。

上場企業に係わる新法の主要規定

  • ファンド規制の見直し
    • 自己募集が業規制の対象となるので登録が必要となる場合も。
    • 適格機関投資家向け特例業務であれば届出のみで足りる。
  • 公開買付(TOB)規制の見直し
  • 大量保有報告書制度の見直し
    • 自社の大株主をより機動的に把握できるようになる。
  • 四半期開示の法定化
  • 財務報告に係る内部統制の強化(日本版SOX法)

(ご参考として):

  • 会社法の求める内部統制システムは、取締役の職務執行が法令及び定款に適合することを確保する ための体制その他株式会社の業務の適正を確保するために必要なもの、と幅広い。
  • もともと内部統制システムの整備は取締役の善管注意義務の一部とされてきた。 ※大和銀行ニューヨーク支店での損失事件では、内部統制システムの整備が行われていなかったこ とが取締役個人の責任を認める理由とされた。
  • 金融商品取引法の求める内部統制報告書の評価対象は、財務報告の適正性を確保するために必要な 体制のみに限定されている。
金融商品取引法の対象範囲

有価証券

■信託受益権・抵当証券、集団スキームの持分等を有価証券に追加

※集団投資スキームとは、組合契約等に基づき出資者が出資又は拠出をした金銭を充てて行う事業(出資対象事業)から生ずる収益の配当または出資対象事業に係る財産の分配を受けることができる権利(出資者全員が出資対象事業に関与する場合や出資額以上の配当や財産分配がない場合は適用除外)


デリバティブ取引

■金融商品または金融指標に基づく先物取引、指数先物取引、オプション取引、指標オプション取引、スワップ取引およびクレジットデリバティブ取引等

※金融商品とは、有価証券、通貨、預金契約等に基づく権利、投資家保護の確保が必要な政令で定める価格変動が著しい原資産のデリバティブ取引、内閣府令で定めるものについて取引所が利率その他の条件を標準化して設定された標準もの
※金融指標とは、金融商品の価格または利率、気象の観測の成果に係る数値、事業活動に重大な影響を与える指標や社会経済の状況に関する統計数値に係るデリバティブ取引のうち政令で定めるものなど

出所:野村資本市場研究所より

最近のディスクロージャー制度改革の背景

  • 2004 年秋以降、西武鉄道の有価証券報告書虚偽記載問題、カネボウの粉飾決算などで情報開示に対する信頼が動揺。
    • 民事責任の追及を容易にする損害の推定規定なども設けられた。
    • その後、中央青山監査法人に対する行政処分が行われ、公認会計士制度の見直しも進められようとしている。
  • 適時開示の充実、グローバルな制度調和といった観点から東証における四半期開示が行われていたが、法定開示制度へ。
    • 会計基準が確立されないと比較可能性が低いといった指摘。
  • ライブドアや村上ファンドの行動がきっかけとなり、TOB制度や大量保有報告制度の「不備」に対する批判が高まった。
    • 直接の関係はないが、両社はいずれもその後刑事事件の被疑者となった。

決算短信制度の見直し

  • 2006 年3 月、東証の決算短信研究会が報告書発表。
  • 見直しの背景は、主として決算報道に携わるマスコミの要請でスタートした決算短信が、次第に有価証券報告書並みの重いものとなっているという現実に対する批判。
  • 決算短信の狙いは、決算情報の早期開示であり、決算と直接関係のない情報や有価証券報告書提出時で差し支えない情報は含む必要がない。
  • 他方、法定開示情報でなくとも、業績予想のように、投資家やアナリストの強いニーズのある情報も
  • 2007 年3 月期から新たな様式での決算発表へ
    • 四半期開示、日本版SOXは2009 年3 月期。

(ご参考として):

  • 2000 年8 月10 日、米国証券取引委員会(SEC)が「レギュレーションFD(Fair Disclosure)」採択。10 月23 日から採択。
  • 証券発行者(企業)及び企業の経営幹部、IR 担当者、広報担当者等がアナリストやファンドマネジャーに対して、一般に公表していない重要な情報(material information)を漏らすことを禁じる。
  • 狙いは、ディスクロージャーに対する信頼の確保と二次情報受領者によるインサイダー取引の防止。
  • 我が国では法制化されていないが、公平な開示が求められていることに変わりはない。

会社は株主を知るべきか?

  • 機関投資家によるカストディアンの利用が拡大する中で、議決権を行使する真の株主の把握が難しいという声がある。
    • カストディアンの利用は、基本的には事務処理の効率化が狙い。
    • 投資家の中には、匿名性を重視する向きもある。
    • 上場会社側は、IR 会社等による実質株主調査に期待。
  • かつては「大株主会」などが一般的だったが、特定の株主の声だけに耳を傾けるべきかどうかは疑問。
  • 機関投資家の間では、株主が求めるのは株主価値の増大であり、株主が誰であるかは関係ないという意見が多い。

ディスクロージャー制度の課題

  • 流通市場における開示(法定開示以外のものを含め)をより重視する方向での制度見直しが必要ではないか。
    • 米国SEC が施行した2005 年12 月に施行した新規則では、上場大手企業(時価総額で区分)に自由書面目論見書による発行開示を認める。
    • もっとも、継続開示には証券会社によるデュー・ディリジェンスが行われていないという問題点(?)もある。
  • 時価総額が大きく、従って市場への影響が大きい会社とそうでない会社とでは異なった規制を課すことが必要ではないか。
    • 米国では、SOX 法404 条の内部統制監査制度をめぐって、中堅公開企業への適用免除などを検討すべきとの指摘が出ている。

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