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監査役の退職慰労金

委員会等設置会社に移行するに際して、監査役に退職慰労金を支払う必要はありますか?退職慰労金を支払う場合、その額はどのように決めるのですか?

「監査役設置会社の監査役が、委員会等設置会社移行後に監査委員会その他の取締役になる場合には、退職慰労金を支払わないという取り扱いも可能です。監査役設置会社の監査役が、委員会等設置会社に残らない場合には、定款で監査役の退職慰労金の額が定められていなければ、株主総会の決議を経て、退職慰労金を支払うことになります。
その場合の、退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法については、株主総会の決議で決めるのが原則です。但し、会社の内規として退職慰労金の支給基準が決められている場合には、株主総会決議による委任を受けて、退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法については、退任監査役の協議又は報酬委員会の決議で決めることも可能です。

解説

1.監査役が監査委員会その他の取締役になる場合

監査役設置会社においては、監査役が数人いる場合は、各監査役が受けるべき退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法については、株主総会決議による委任を受けて、会社の内規として定められた退職慰労金の支給基準に従って、監査役の協議によって決められます(商法第279条第2項)。

委員会等設置会社においては、監査委員会の取締役として受けるべき個人別の報酬の内容は、報酬委員会が決定しますから退職慰労金についても報酬委員会が決定することになります(商法特例法第21条の8第3項)。

このように、監査役設置会社の監査役の退職慰労金と、委員会等設置会社の監査委員会の取締役としての退職慰労金とでは、その決定手続が異なっています。そこで、監査役としての退職慰労金を支払った上で、監査委員会の取締役としての退職慰労金は別途監査委員その他の取締役を退任したときに支払うということも考えられます。

しかし、監査役がそのまま監査委員その他の取締役に横滑りする場合、当該監査役であった者は会社に残るのですから、退職したという取り扱いをせず、当該監査役が委員会等設置会社の取締役を退任する際に、監査役としての退職慰労金の分を合わせて退職慰労金を算定し、支払うことは可能です。

従って、監査役設置会社の監査役が、委員会等設置会社移行後に監査委員その他の取締役になる場合には、その段階では退職慰労金を支払わないという取り扱いも可能です。

2.監査役が委員会等設置会社に残らない場合

  • 監査役が委員会等設置会社に残らない場合には、監査役であった者は退社することになりますから、かかる監査役に対しては、定款で監査役の退職慰労金の額が定められていなければ、株主総会の決議を経て、退職慰労金を支払うことになります。
  • 上述のとおり、監査役設置会社においては、監査役が数人いる場合は、各監査役が受けるべき退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法については、株主総会決議による委任を受けて、会社の内規として定められた退職慰労金の支給基準に従って、監査役の協議によって決められます。ところが、委員会等設置会社に移行するに際して、監査役制度も廃止されることから、退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法について、総会後に監査役で協議することができなくなります。そこで、各監査役の退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法をどのように決定するのかが問題となります。
  • まず、各監査役が受けるべき退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法についての決定権は、本来的には株主総会にあるのですから、監査役設置会社から委員会等設置会社への移行に伴う監査役の不在という例外的な場合には、株主総会で各監査役が受けるべき退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法を決するのが原則です。
  • しかし、一方で、各退任監査役が受けるべき退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法を明らかにすることは、各退任監査役のプライバシーにも関わることから望ましくないとの実務上の要請もあります。
    このような要請に応える方法としては、会社の内規として退職慰労金の支給基準が決められている場合には、株主総会決議により、退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法については、退任監査役の協議に一任することも、違法とは言えず、可能だと考えられます。

    なお、委員会等設置会社移行後は監査役がいなくなるということを厳密に解して、株主総会決議により、退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法について、報酬委員会に委任するという方法も考えられます。
    この方法は、取締役によって構成される報酬委員会に退任監査役の退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法を決めさせることになるため、監査役の独立性を侵害するおそれがあるとの異論が示される懸念なしとしません。

    しかし、監査役が監査委員会その他の取締役になるときには、監査役設置会社において、監査役が取締役となる場合とは異なり、監査役時代の監査が厳正であったことに対する報復が取締役会によってなされるというような懸念は起こり得ません。
    また、報酬委員会は社外取締役が中核を担うことが予定されているので、業務執行者からの独立性が高く、監査役と類似した職務を行う監査委員たる取締役の報酬も決定できることから、報酬委員会に退任監査役の退職慰労金の具体的金額、支給期日、支給方法を決めさせることは、監査役の独立性を侵害することにはならないと考えられます。現実に、この方法による実務が散見されつつあるようです。

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