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プロキシィーファイトのための競業株主による
株主名簿閲覧謄写が認められた事例
〜原弘産VS日本ハウズイング事件東京高裁決定

1.原弘産VS日本ハウズイング事件決定

不動産開発事業者の原弘産は、日本ハウズイングに対する買収提案に関連して、平成20年6月開催予定の株主総会において、新規買収防衛策の導入及び既存の買収防衛策による原弘産に対する対抗措置不発動などを議題とするよう日本ハウズイングに株主提案を行いました。
原弘産は、同提案に対する賛同の委任状勧誘を株主に行う準備として、日本ハウズイングに株主名簿の閲覧及び謄写を請求しました。日本ハウズイングは、原弘産が競争関係にある事業者であり、会社法に規定されている閲覧等の拒否事由に該当するとしてこの請求を拒否したため、原弘産は、閲覧・謄写を求めて裁判所に申立を行いました。
第一審では、競業株主であることを理由に原弘産の申立を却下しましたが、東京高裁は平成20年6月12日の決定で、会社法の拒否事由に関する規定を実質的に解釈し、原弘産の閲覧謄写請求を認める決定を行いました。
本高裁決定は、会社法施行後、競業株主による株主名簿閲覧謄写請求を肯定した初の司法判断であることから、注目されています。

2.株主名簿閲覧謄写請求の意義と会社法の規定

(1)意義

株主に対しては、株主総会招集請求権並びに株主総会での議題及び議案提案権等を規定し、会社経営に対する監督及び意思表明の機会が保障されています。
株主が株主提案権あるいは会社提案に対する反対の意思表明権を実現するためには、委任状の勧誘等により自己に賛同する株主を募る必要がありますが、その前提として株主が誰であるかを調査しなければなりません。
株主名簿閲覧謄写請求権は、株主提案権等の株主による意思表明の行使を実効あらしめる権利と位置付けることができます。

(2)会社法の規定

株主は請求の理由を明らかにすれば会社に対して、営業時間内はいつでも閲覧または謄写の請求ができるのが原則です。
旧商法では閲覧・謄写請求に対する拒否事由は規定されていませんでしたが、判例上、不当な意図、目的によるものなど権利の濫用にあたる場合には請求を拒否できるとされていました。

  • 請求者がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
  • 請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
  • 請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
  • 請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
  • 請求者が、過去2年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。

(3)競業株主による請求 〜テーオーシー事件決定

上記の拒否事由の内、Bの競業株主による請求については過去の裁判例で問題になったことがないにも関わらず織り込まれたもので、競業関係にあれば無条件に拒否しうるのか、その適用範囲について議論がありました。
ダヴィンチ・アドバイザーズVSテーオーシー事件の決定(東京地裁平成19年6月15日)において、競業株主の請求に対する初の司法判断が下されましたが、条文どおり競業関係にあることをもって拒否事由としました。
この決定に対しては、正当な権利行使目的であるか否かを問うことなく、競業関係のみをもって一律に閲覧謄写請求を拒否するのは不合理であるとの批判と競合企業による買収提案及びこれに関連する株主提案を著しく阻害するものであるとの批判があったところです。

3.東京高裁平成20年6月12日決定の要旨 〜テーオーシー事件決定が覆る

原弘産VS日本ハウズイング事件の一審ではテーオーシー事件決定を踏襲し、原弘産の請求を否定しましたが、本東京高裁は、競業株主であることのみをもって株主名簿閲覧等請求権を否定することは、当該請求権を付与した趣旨を没却し、目的と手段の権衡を失する不合理なものとして、原弘産の請求を認める決定を行いました。

「東京高裁決定要旨」
株主名簿閲覧請求権の趣旨(125条2項) 株主の権利行使の保障及び株主による会社機関に対する監視と会社利益の保護。
拒否事由規定の趣旨
(同条3項)
閲覧等の請求が不当な意図・目的による権利の濫用と認められる事由を類型化したもの。
競業株主による請求を拒否事由とする同条3項3号の解釈 競業株主が請求した場合、会社の犠牲において専ら自己の利益を図る目的と推定し、権利の確保又は行使のための調査目的であることの証明責任を請求者に転換したもの。
競業株主による請求を拒否できない場合 請求者が株主としての正当な権利確保又は行使のための調査目的であることを証明した場合には拒否できない。

4.会社側の対応

上記東京高裁決定は確定し、最高裁の判断は行われませんでした。同決定は、株主名簿閲覧謄写請求権の趣旨からすれば、競業株主による請求であっても、正当な権利行使目的であれば拒否すべき理由はなく、妥当な結論であると考えられます。本高裁決定は、競業株主ということのみをもって形式的に拒否事由に該当するとのテーオーシー事件決定以来の流れを変える重要な決定と位置付けることが出来ます。 もっとも、本高裁決定における拒否事由の解釈は、条文の形式的な記載から離れ過ぎているとの批判も予想されますので、司法判断が固まるには今後の判例の集積を見守る必要があるでしょう。 しかし、本高裁決定が指摘している趣旨から考えますと、買収防衛的に競業株主による株主名簿閲覧謄写請求を理由なく拒否することは、経営陣の保身目的と捉えられ、あるいは株主が株主提案に関する情報を受領し、委任状等を通じて意思表明をする機会を奪ったと株主から批判される可能性があることに注意しなければなりません。 会社経営陣は、濫用的な目的でない限り、株主名簿の閲覧・謄写は認め、会社提案と株主提案を株主に提示し、株主の選択を仰ぐ姿勢こそが株主から求められていると認識しておく必要があると言えます。

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