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見直され始めた買収防衛策

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1.買収防衛策を廃止する機運の芽生え

 平成17年2月のニッポン放送買収事件、同年5月の経済産業省等による買収防衛策指針の公表などを契機に、敵対的買収防衛策の導入が一種のブームとなり、平成20年5月時点で全上場会社の10%以上に相当する約500社が事前警告型買収防衛策を導入または導入を予定しています(日経新聞平成20年5月13日)。
 外資系ファンド等の仕掛けた敵対的買収に対するネガティブな国民心理から買収防衛策の導入に肯定的な意見がある一方、ブームとでも言うべき現象を日本市場の閉鎖性の象徴と捉えたり、または過度の防衛策がもたらすことになる経営陣のモラル低下、あるいは株式の持合助長等の弊害に警鐘を鳴らす意見も出されていました。
 このような論議がなされていたところ、平成20年に入って、資生堂、日本オプティカル、イーアクセスなどが事前警告型買収防衛策を廃止すると発表しています(日経新聞平成20年5月1日など)。
 このような買収防衛策を見直す動きは今までにはなかったものです。
 そこで、その背景・理由は、如何なるものか探ってみましょう。また、かかる機運があるにもかかわらず、買収防衛策を導入・維持する方針の会社が注意すべきポイントは何かを検討してみます。

2.事前警告型買収防衛策廃止の理由と背景は?

(1)公開買付制度の整備

 事前警告型買収防衛策は、(1)買収者による情報提供のプロセス、(2)新株予約権発行等の対抗措置、(3)対抗措置を発動すべき場合、及び(4)買収対象会社における対抗措置発動の意思決定プロセスを、会社が自主的にルール化したものです。
 平成18年の証券取引法(現在の金融商品取引法)改正により、上記の「買収者による情報提供」については、○a買収者による情報提供内容の充実や○b買収対象会社の質問権の付与等によって情報提供の強化が図られました。
 事前警告型買収防衛策を廃止した各社は、共通して上記改正による法整備を廃止の大きな理由として挙げていますが、果たして改正点は買収防衛策を代替しうる制度となっているでしょうか?

(ア)事前警告型買収防衛策のルールと公開買付制度による規制との比較

廃止が予定されている資生堂の買収防衛策を例として公開買付制度と比較すると次のようになります。

  事前警告型買収防衛策のルール 公開買付制度による規制
適用対象 ・市場内取引及び市場外取引
・20%以上となる買付
・原則、市場外取引が対象
・5%超となる買付
(多数の者からの取得の場合)
・1/3超となる買付
(10名以内からの取得及び急速な買い付けの場合・・・*)
適用時期 買付実行前に適用。 買付開始時
買収者による
情報提供
買付説明書の提出義務
(主要記載事項)
・買収者の概要
・買収目的
・買収価格の算定根拠
・買収後の経営方針
・買収資金の裏付け
「公開買付届出書」の提出義務
(主要記載事項)
・買収者の概要
・買収者目的(18年改正)
・買収価格の算定根拠(18年改正)
・買収後の経営方針等(18年改正)
・株式保有方針(18年改正)
買収対象会社に
よる意見表明
独立委員会の勧告後、対抗措置発動の要否につき意見表明 「意見表明報告書」の提出義務
(改正により提出が義務化)
買収者への
質問権
対象会社が必要と判断した情報を適宜追加提出するよう要求できる。 「意見表明報告書」に買収者に対する質問の記載可能。買収者は質問に対する回答を「対質問回答報告書」に記載して提出する義務あり(18年改正)。
期間制限 独立委員会の検討期間(最長60日間)以外に期間制限なし。 公開買付期間:20〜60営業日
意見表明報告書の提出:10営業日内。
対質問回答報告書の提出:5営業日内

*急速な買付とは、3ヶ月の間に5%超の市場外買付けと市場内買付けを組み合わせて合計で10%超を取得する取引で、結果として1/3超となる買付けを言い、当該取引全体が公開買付制度の対象となります。

(イ)上記ルールと規制の差異

証取法の18年改正の結果、買収者からの提供情報の内容、並びに買収対象会社の質問権と買収者の回答義務という形で情報開示を促すという点においては、一見すると両者の共通点は増えたように見えます。 しかし、両者は次のとおり適用対象の点で大きな相違点があります。

  • 買収防衛ルールは、20%以上の買付けであれば、市場内取引、市場外取引のいずれの場合であっても適用するという自主ルールです。
  • ところが、公開買付制度は、原則として市場外取引のみを適用対象としており、市場内取引で株式を取得した場合には取得議決権の比率にかかわらず適用されません。
  • なお、市場外で買付ける場合であっても、少数の者から議決権総数の1/3までの取得であれば公開買付制度の適用は除外されます。

(ウ)公開買付制度の改正によって買収防衛策ルールは不要になったと言えるか?

(1)適用対象の問題
20%以上の買付の場合を基準とする事前警告ルールを導入していない場合には、上記のとおり市場内で買付ける場合、あるいは1/3までを少数者よりの買付け等で取得する場合には、公開買付制度が適用されないため、買収者はいわば素通りで1/3まで買付けを行うことが出来ます。
ところで、総議決権の1/3の議決権は、株主総会での特別決議を拒否することができるポジションです。上場会社では議決権行使比率が7割〜8割程度であることを考えれば、議決権総数の1/3近くを握れば拒否権を越えて経営支配権すらをも手中にできる可能性が高くなります。
つまり、事前警告型のルールを設けていない場合には、公開買付制度の規制を受けることなく敵対的な株主に1/3近くの議決を握られ、実質的な支配権を握られる危険性があり得るのです。

(2)期間制限の問題
また、公開買付制度は、現に買付けが開始された場合のルールですから、次のとおり期間制限が厳格になっています。
買収対象会社の意見表明は、公開買付開始の公告から10営業日以内、対質問回答報告書は質問の送付を受けてから5営業日以内となっています。
このように意見表明や回答のための検討期間が限定されているために、結果として株主に対して必要かつ十分な情報提供がなされない可能性があります。

(3)回答理由の不開示
さらに、買収者が買収対象会社の質問に回答する必要がないと考えた場合、その理由を明確にさえすれば、回答しないことも許されるので、買収対象会社の質問権は、空振りに終わる可能性もあります。

(4)買収防衛ルールの意義
改正後の公開買付制度は、情報提供の点においては買収防衛策の自主ルールと共通する事項が増えましたが、上記の問題点(特に適用対象の問題)から自主ルールを代替しうるまでのものではありません。
したがって、買収防衛策を廃止したケースでは、公開買付制度の法改正が積極的な理由ではなかったと考えられます。

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